「歯科領域における血液・体液暴露事故における感染対策」
琉球大学大学院医学研究科顎顔面機能再建学講座
准教授 西原一秀
歯科医療従事者(歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、歯科助手、受付など)は、常に病原微生物に暴露する可能性がある。特に、歯科治療は浸麻針やスケーラーチップなど鋭利な器具を使用するため血液・体液暴露事故に遭遇する機会が多い。
血液・体液は無菌的に見えてもさまざまな病原微生物を含んでいる可能性がある。針刺し・切創や傷のある皮膚や粘膜に血液・体液が接触して体内に侵入し、職業感染の原因となる微生物にはB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、HIVウイルスなどが知られている。血液媒介感染症では、無症候性のウイルスキャリアや検査をしていないのでHBV、HIV感染がわからないままの血液などが存在し、健康な人の血液でも安心することはできない。また、われわれが行った調査では、HIV感染者の半数以上は歯科医院に感染を伝えずに治療を受けている。
沖縄県のAIDS感染者の割合は、5年間の人口比で全国平均1位を占め、HIV感染者は3位である。HIVウイルスの感染率は低いと云われているが、HIV患者は合併症を併発することが多く、抗HIV 療法中の患者は多くの薬を服用している。したがってHIV患者の歯科診療は、治療内科と連携を図りながら患者状態を良く知ることが必要である。
現在、HIV/AIDSの治療法では、1日1回1錠の薬(QD錠)が多く開発され、今年から来年にかけて殆どの薬剤がいわゆるQD剤に移行する予定である。また、医師・歯科医師連携では、宮古病院にHIV診療チームが創設され、歯科医院と連携体制が取れる状態である。
今回は、基本に却って「歯科領域における感染対策」と「最近のHIV感染症の治療と歯科治療時の注意点」などについて講演する予定である。